相続でアパートを引き継いだらどうする?
相続税の節税対策で建てたアパートを相続する場合は、まず不動産投資ローンの残債の有無を確認します。被相続人(故人)が団体信用生命保険に加入していた場合は、死亡とともにローンの支払い義務がなくなるため、相続に残債が残ることはありません。
一方で、団体信用生命保険に加入していなかった場合は、アパートと同時にローンの負債も相続しなければなりません。ただし、ほかに多額の現金を相続する場合は、残債を一括して返済した上で、アパートを経営する方法もあります。
以上の点を確認した上で、アパートを経営することを選択した場合は不動産の名義変更登記を行います。
毎月の収支と賃貸状況を確認する
登記が終わって正式にオーナーになったら、毎月の収支とともに、賃貸状況を確認しておきましょう。引き継いだアパートが現状満室か空室を抱えているかでは、経営の安定度が変わってきます。アパート経営で発生する収入と支出には次のようなものがあります。
【収入の部】
- 毎月の収入……家賃、共益費、駐車場賃料等
- 不定期の収入……更新料、礼金等
【支出の部】
- 毎月の支出……ローン返済費(残債が残っている場合)、管理委託料等、租税公課
- 不定期の支出……仲介手数料、修繕費、損害保険料、諸経費
また、空室の有無や空室期間、過去からの家賃の下落幅なども調べておくと、今後の見通しが立てやすくなります。
もちろん、ローンの残債額も把握し、支払いが何年後まで続くのか、金利が何%以上上昇したら、キャッシュフローがマイナスになってしまうのかなども可視化したほうが、より賃貸経営をコントロールすることができるでしょう。
税金も含め発生するコストを確認する
アパート経営では次のような税金の支払いも、コストに含めて考えなければなりません。
- 所得税
所得金額-所得控除額×税率-税金控除額 - 住民税
所得金額-所得控除額+均等割額(市町村税3,500円、都道府県税1,500円) - 固定資産税
毎年1月1日現在で固定資産台帳に記載されている人が納税する税金で、税率1.4%。 - 都市計画税
毎年1月1日現在で都市計画区域内の指定地域に不動産を持つ人が納税する税金で、税率0.2~0.4%(市町村によって異なる)。 - 個人事業税
(売上-経費-専従者給与-各種控除)×税率。税率は3~5%で業種によって異なる。
※専従者給与は青色申告利用の場合。白色申告の場合は専従者控除。 - 消費税
税率は10%(消費税7.8%+地方消費税2.2%)。「中小事業者の特例」で課税売上高1,000万円以下の事業者は納税免除。
なお、固定資産税、都市計画税、個人事業税、消費税は経費として計上できます。
必要な修繕の有無を確認する
引き継いだ時点で物件に修繕が必要な箇所があるのかどうか確認することも、今後の経営を考える上で重要です。修繕箇所の規模によって、修繕の方法が変わってくるからです。一般的にいわれている築年数と修繕規模の関係は次の通りです。
- 築10年以上……修繕箇所が出始める年数といわれていますが、まだ部分的な修繕や原状回復工事で済む時期です。
- 築15年以上……キッチン等設備が劣化してくる時期のため、設備の入れ替えが必要な場合があります。また、外壁や屋根のメンテナンスも必要になってきます。
- 築20年以上……劣化が進んでくるため、入居者の退去に合わせてリフォームを検討する時期です。
修繕は見積もり比較サイトなどを参考にして、どの修繕にどの程度の費用が必要かを事前にリサーチしておきましょう。また、初期の頃は複数の業者に相見積もりを出してもらい、相場観を養うことができれば大家さんとしてのスキルも高くなります。必要になる修繕を実施することを見据えて、事前に積み立てておく必要があります。