アパート・マンションには、入居者が清掃する専有部分と、建物の持ち主であるオーナーに管理義務がある共用部分があります。
「共用部分」と「専有部分」がある
共用部分と専有部分のそれぞれの特徴は以下をご覧ください。
範囲 | 具体的な場所 | |
---|---|---|
共用部分 | 入居者全員が共同で利用する場所(専有部分以外) | ・エントランス ・共用廊下 ・階段 ・エレベーター ・給排水等の配管 ・配線設備 ・駐車場や駐輪場 |
専有部分 | 入居者個人のプライベートな居住空間 | ・キッチン ・リビング ・トイレ ・バスルーム |
アパート・マンション共用部を清掃するメリット
共用部分を清掃するメリットには以下の4点が挙げられます。
1.入居者の満足度が高まり退去率が下がる可能性
2.内見後の成約率が上がる可能性
3.建物内の秩序を保つことができる
4.建物の老朽化を防ぐことができる
それぞれ解説をしていきます。
1.入居者の満足度が高まり退去率が下がる可能性
共用部分が常にきれいな状態であると、住んでいる人が気持ちよく建物を利用できるため、物件への満足度が高まる可能性が高いです。反対に、掃除をあまり行わずあちこちが汚れている物件では衛生上良くないため、入居者の満足度低下につながり、場合によっては退去につながることも考えられます。
日頃から共用部分を清潔な環境にしておき、入居者が気持ちよく生活を送れるような建物の状態にしておくことが大切なポイントです。
2.内見後の成約率が上がる可能性
アパート・マンションの契約前は内見をするのが一般的です。実際に物件の様子を見て入居するかどうかの判断をしますので、建物の共用部分がきちんと清掃されていてきれいな状態が保たれていると、内見者が良い印象を受ける確率が高まり、成約率向上につながる可能性が期待できます。
どんなに立地条件が良く内装がきれいでも、共用部分が汚れている物件は「きちんと管理されていない物件ではないだろうか」という疑念につながり、成約を逃してしまうかもしれません。特に、家賃のほかに管理費もプラスされる契約内容の場合だと、きちんと管理されていないのに管理費をとるのはどうなのか、と思われてしまう可能性もあり、一気に信用度が下がるので十分気をつけましょう。
◆こちらの記事では、成約率向上が期待できるアイデアをまとめて紹介しています。あわせてご覧ください。
└賃貸経営の空室対策アイデア22選!空室の原因8つも検証
3.建物内の秩序を保つことができる
常にきれいな状態で管理されている物件だと、多くの入居者が建物内を清潔に保たなければならないという意識を持ちやすくなり、日頃から汚さないよう注意するようになっていくことが期待できます。入居者のモラル向上から、建物内の秩序が良い水準で保持されるようになるのもメリットのひとつです。
そのうえ、植栽がきれいに刈り込まれ、エントランスの床や入口が磨かれた物件は見通しがよく明るい雰囲気のため、防犯性が高くなる傾向があるのもメリットです。
反対に、共用部分が汚れていたり散らかったりしている建物は、住民全体の意識が低くなりやすいので注意が必要です。いわゆる「割れ窓理論」をさし、「1枚の割られた窓ガラスを放置していると、割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃する」という考え方です。1994年以降、犯罪が多発していたニューヨーク市で、当時のジュリアーニ市長が街の外観を美しくする活動を続けたところ、犯罪が少なくなるという結果が出ました。
このように、共用部分の清掃を行いきれいな状態にしていると、入居者の意識も高い状態で維持できることにつながるので、居住環境が整えられた物件として稼働できます。
4.建物の老朽化を防ぐことができる
建物を頻繁に清掃していると汚れが付着しにくくなるため、性能の良い状態で建物を保存することができます。建物の老朽化を防ぐことによって、資産価値が低下しにくくなるのもメリットです。清掃しながら隅々まで建物を見ていれば、建物の傷んでいる箇所も発見しやすくなりますので、劣化が進む前に修繕などの処置もできるようになります。
もしも清掃をあまりせずに老朽化が進んでしまうと、空室率が増え、その結果として家賃収入が目減りしてしまうかもしれません。傷んでいる部分をそのまま放置しておくと、さらに劣化が進み、資産価値が下がるだけでなく修繕費も高くなってしまうので注意しましょう。
日常の清掃だけではすべての老朽化を抑えることは難しいため、定期的に点検や特別清掃(排水管の洗浄や高所清掃など)を実施するのをおすすめします。
清掃業者へ委託する場合の費用相場
清掃費用は業者により細かな違いがあるものの、費用相場はおおむね近いです。ここでは清掃業者へ委託する場合の費用相場について紹介します。
清掃業者に委託する場合は、下記の内容を「月1回」や「月4回(週1)」などと、頻度や戸数に応じて料金を設定します。業者によって清掃内容や時間、料金が異なるため、含まれている内容や清掃時間などを確認したうえで依頼することが必要です。
【アパート巡回清掃の主な内容】
・エントランスや共用廊下などの掃き(拭き)掃除
・駐車場、駐輪場の清掃
・蜘蛛の巣の除去
・ゴミ置き場の清掃
・落ち葉の除去、草むしり、除草剤散布
・チラシの回収
・自動ドア、掲示板などの拭き上げ
【アパート巡回清掃の費用相場】
戸数 | 月1回(円) | 月2回(円) | 月4回(円) |
---|---|---|---|
1~6 | 5,000~9,000 | 9,000~14,000 | 14,000~18,000 |
6~10 | 6,000~12,000 | 12,000~18,000 | 18,000~24,000 |
10~16 | 7,000~15,000 | 13,000~22,000 | 22,000~30,000 |
16~20 | 8,000~18,000 | 14,000~27,000 | 28,000~36,000 |
このように戸数によって料金体系が分かれることが多いので、依頼したい清掃内容と物件の戸数、予算などを総合的に判断し、業者を選択するようにしてみてください。
清掃業者の中には、オーナーが立ち会わなくても、清掃後に写真付きのレポートを送付してくれる業者もあります。とはいえ、建物の状態を知っておくためにも、定期的に実際の作業の様子を確認することをおすすめします。