不動産の「両手取引」とは?メリット・デメリットについて解説!

住む子さん

不動産仲介会社で働いていると、「両手取引」という言葉を耳にする機会が多くあります。両手取引について詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。賃貸物件の取引ではあまり馴染みのない両手取引ですが、不動産業界に関わる以上知っておいて損はありません。今回は、両手取引の詳しい内容や片手取引との違いやメリット、デメリットについて紹介していきます。

住む男くん

不動産取引における「両手取引」とは

物件を売買・賃貸を依頼する際に不動産仲介会社に依頼するのが一般的です。このとき、仲介業者が物件の売主・買主(借主)の両方を仲介する形態を、両手取引または両手仲介と呼びます。

不動産が成立すると、仲介業者は売主・買主の双方から成功報酬として仲介手数料を得ることができます。片手取引と比べると、一回の売買契約で2倍の利益が得ることができるのが両手取引の大きな特徴です。

また、取引形態に関わらず、仲介業者はできるだけ多くの売手・買手・借主を見つけるための活動をする義務があります。そのためには他の不動産仲介会社に紹介することもありますが、他社の仲介業者に紹介すると、仲介手数料が売主分もしくは買主分しか得ることができません。

できるだけ多くの仲介手数料を得るために、他社の仲介業者には紹介せず、自社だけで売手・買手(借手)を見つけようとする仲介業者も少なくありません。仲介手数料の兼ね合いによって、本当に希望する物件を紹介されなかったり、希望の条件で不動産売却がされなかったりする可能性もあります。

住む子さん

両手取引のメリット

顧客にとって不利な面が多いといわれる両手取引ですが、そんな両手取引にもいくつかのメリットがあり、実際に行われていることが多くあります

仲介手数料の値引きが適用できる場合がある

先述したように、両手取引を行った場合、仲介業者は売主・買主(借手)それぞれから仲介手数料を得ることができます。そのため仲介手数料を値引きしても、仲介業者が得られる手数料は片手取引よりも多い金額となることがほとんどです。その為、仲介手数料の値下げに応じる仲介業者も多い現状です。

詳しい物件情報を顧客に提供できる

物件の情報を細かく顧客に伝えることができるのも両手取引の特徴です。顧客が買主の場合、売主から集めた詳しい物件情報を買主である顧客に提供できます。片手取引では知り得なかった細かい情報も、両手取引だからこそ提供できるかもしれません。

仲介業者がより詳しい情報を顧客に提供することで、買主の購入意欲が高まるかもしれません。不動産仲介会社だけでなく、売主・買主双方にとっても大きなメリットになり、スムーズな売買活動にも繋がります。

また、片手取引と比べ、よりスピーディーな取引がしやすいのも両手取引の特徴です。仲介業者の担当者は売主・買主双方の希望を熟知しているため、候補者が見つかり次第、売買契約まですぐに進めることができます。

積極的に売却活動を行うことができる

片手仲介の場合、売主が依頼している仲介会社と買主が依頼している仲介会社の間でやり取りをする必要があり、連絡に手間や時間がかかる他、お互いの条件や希望などに相違が生まれる可能性があります。しかし、窓口が1つである両手取引はそのようなやり取りの必要がないため、積極的な売買活動が叶うでしょう。

住む男くん

両手取引のデメリット

両手取引は、仲介業者だけでなく売主・買主にとってもメリットがあることがわかりましたが、顧客が不利になる部分も多いです。さらに、不動産仲介会社にとってもデメリットがあるので、次項でそれぞれの内容を確認しておきましょう。

どちらか一方に寄り添いがちの状況に陥る可能性がある

両手取引の場合、売主・買主双方の希望を叶えるのは極めて難しいです。なぜなら、ほとんどの売主が高い値段で物件を売却することを希望し、ほとんどの買主が安く価格で購入することを希望しているからです。

一方、片手取引は売主・買主どちらかの希望だけに応えるため、このような葛藤はほぼ生じません。両手取引は、お互いの利益が相反しやすい取引形態だといえます。

たとえば売主側に寄り添うと、買主は大きな不満を抱えることになるでしょう。「もっと安く物件を購入したい」と伝えても、その要望が通ることはほとんどありません。そして買主側に寄り添うと、上記の反対のことが起こってしまうでしょう。

このように矛盾が生じてしまう両手取引は、売手・買手どちらの希望も叶えたいと考える不動産営業マンにとって、特にやりにくい形態の取引だといえます。

契約完了までに時間がかかる

片手取引よりもスムーズに行える両手取引ですが、契約完了まで時間がかかるケースもあります。たとえば、売主のニーズを満たす買手が自社の顧客リストから見つからない場合、条件の交渉に多くの時間を要するおそれがあります。片手仲介の場合、別の不動産仲介会社にも紹介するためニーズを満たす売手・買手が早く見つかることも珍しくありませんが、両手取引では自社の顧客だけで完結させなければいけません。

不動産取引に時間がかかると、売主・買主に迷惑をかけることはもちろん、仲介業者の利益にも悪影響を与えます。両手取引を続けるか、諦めて片手取引に切り替えるかは、抱えている自社リストの多さによって決めるのが賢明といえます。

売主の選択肢を狭める「囲い込み」に気をつける必要がある

囲い込みとは、他社の不動産会社に売主のニーズにマッチする買手が現れても紹介しない、または知られないように情報を操作するということを指す言葉です。

たとえば、売主のニーズにマッチする買手をA、自社が抱えている買手をBとしましょう。売手にとっては、Aに不動産売却する利益の方が大きいですが、Aは他社の仲介業者の顧客のため、売主からの手数料しか得ることができません。そのため売主・買主から仲介手数料を得られる買手Bを売主に紹介しますが、これが囲い込みであり、合法ではあるものの利益相半行為としてたびたび問題視されています。

すべての不動産仲介会社が必ずしも囲い込みを行うとは限りません。しかし、囲い込みが起きやすい両手取引は、売主の不利益が生じる可能性が高いのです。囲い込みは違法ではありませんが、これを行うと不動産会社の評判が大きく損なわれてしまうため、不動産営業マンは気をつけなければいけません。